【カンタベリーの城壁】ローマと中世の歴史をたどる石造の防衛線🏰

今回は、イングランド・ケント州の歴史都市カンタベリーに現存する「カンタベリーの城壁(Canterbury’s City Walls)」をご紹介します🏰 カンタベリーの歴史は古代ローマ時代にさかのぼり、その痕跡は今なお市内のあちこちで目にすることができます。その代表格がこの城壁です。





城壁の概要

カンタベリーの城壁はローマ時代に最初に築かれ、中世に再建・補強されながら現在に至るまで部分的に現存しています。街をぐるりと囲むこの城壁は当時の都市防衛の要として設計され、現在でもその存在感を放っています。

現代のカンタベリーでは、城壁に沿って散策できるエリアが整備されており、観光客にとっても歴史を体感できる人気スポットとなっています。




👀特徴・見どころ

この城壁の見どころの一つは、現存する「ウェストゲート・タワー(Westgate Tower)」です。これは市内西端に位置する門で、かつての城壁の防衛機能を今に伝える貴重な建築です。

この他にも、当時の塔・門・歩道が残っており、一部区間では歩いて上を通行することも可能です。歴史の中に入り込んだような感覚が味わえます。

現在でも確認できる城壁の遺構は以下の通り:

  • 🧱 石造の城壁: 中世の修復を含む堅牢な構造。
  • 🚪 城門(5か所以上): 交通と軍事を担った重要ポイント。
  • 🛡️ 24の塔: 14世紀に増築され、防衛力を強化。



ℹ️その他の情報

この城壁の歴史は、実に2000年以上にわたります。最初の構築はローマ時代、街が「ドゥロヴェルヌム」として機能していた頃であり、ローマ街道網との接続を意識して設計されたものでした。5つ以上の門は街の出入り口として、物流や軍事にも重要な役割を果たしていました。

ローマ帝国の崩壊後、カンタベリーは一時衰退しますが、城壁は残され、6世紀末にアウグスティヌスがこの地に布教拠点を設けた背景には、この防御性の高さが影響したとも考えられています。

アングロ・サクソン期には、城壁の上に礼拝堂が築かれ、宗教と軍事の両面から活用されました。11世紀にはノルマン人の侵略がありましたが、抵抗なく街は占領されたことから、城壁の軍事的価値は低下していたとされています。

その後の転機は14世紀の百年戦争時期。フランスからの侵攻の危機を受けて1363年から30年間をかけて再建され、城壁の中に24の塔が追加され、石とレンガで多くのゲートハウスが築かれました。これは、イングランド最初の火器搭載型防衛建築の一つとも言われています。

しかし17世紀のイングランド内戦では、議会軍により壁が意図的に破壊され、多くの門の扉が焼失。1660年のチャールズ2世の王政復古でようやく修復が行われました。

このように、カンタベリーの城壁は単なる「城壁」ではなく、ローマ帝国〜中世〜近世までの歴史を連続的に体現する貴重な構造物です。




📌関連スポット:
・ウェストゲート・タワー → こちらの記事
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